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第四回分の講義録です。 
ちなみに私 (ぽけ) は一足早い夏バテで欠席してしまいました。
果たして単位は貰えるのでしょうか・・・
前回はゴキゲン側に5筋の位を取らせて、逆襲する指し方をやりました。
実際の形勢は別にして、抑え込む居飛車は勝ち切るまでの苦労が多く、
5筋の位を取らせる指し方はプロ間では減少しつつあります。
5筋の位を取られまいと、居飛車側から5筋の歩を突くという考え方はありますが
それは居飛車が後手番(中飛車側が先手)のとき有効な手段で居飛車が先手番
のときだと、以前やりましたように、後手の中飛車側に馬を作られる変化があります。
これについては先手中飛車の回で扱います。


丸山ワクチン基本図までの基礎知識


居飛車側にも別の対策が登場しました。
序盤早々、角を交換して5筋を争点にしない指し方です。
▲2二角成=「ガス抜きの手」と自分は呼んでいます。
中飛車の5筋の位というのは、抑え込んで居飛車陣に圧力をかけるのが狙いです。
ところが角をさばいてしまえば、居飛車側は空気穴の抜けた袋のようなもので、
押されても圧力はかかりません。
もし中飛車側が△5五歩として位を取っても、それは後々負担になります。
角の打ち込みに気を使いながら、取ってしまった位を守らないといけないからです。
押さえ込み以外に残された狙いの筋は、5筋歩交換のさばきですがこれも▲4七銀
で封じられ、中飛車側これ以上押す手なしです。
ゴキゲンの攻撃的でスピーディーな特性を殺す、うまい戦い方です。
丸山九段が得意とする指し方で、猛威を振るうゴキゲンに高い勝率をあげたことから、
この特効薬を

丸山ワクチン

と呼んでいます。
「角交換に5筋は突くな」という格言があります。
この戦型における居飛車の方針は、早い戦いを望んでいる中飛車の出足を角交換で止めて、
争点を作らないことです。
5筋を早々と突いた後手の駒組みの不自由さに目をつけています。
角を手持ちにしているので、5筋を突いてしまった後手は、つねに角の打ち込みに気を使い
ながら駒組みしなければなりません。
例えば中飛車側の左金は、先手の角の打ち込みに備える為、玉に寄せることができません。
一方、居飛車側は5筋を突いていないので金を自玉に寄せることができ、振り飛車より堅く囲うことができます。
争点がない中でいかに優位に立つかを模索し、これまで様々な駒組みがなされてきました。
この戦型のよくある進展を見てみます。
最近は先手も後手も銀冠が主流です。
玉の固さ戦場からの遠さ玉頭の厚み陣形のバランス ・・・
すべてをほどよく含んでいるからでしょう。

基本図に向けて、初手から並べます。
角を交換していきなり端歩というのが「定跡」です。それから美濃囲いを先に作ります。
この早い端歩突きには歴史がありまして、以前は端歩を突かずに▲7八銀でした。
もし端歩を突かないと、後手から5筋の歩を交換する手が生じます。
一見、この角打ちで先手有利に見えますが角を先手陣の死角に打ち込まれてしまいました。
こうなると香車を助けるのが難しい。
ところが端歩を突いた形だと・・・
香車を9七に浮いてしのげます。
後手も▲9六歩に対して△9四歩以外の手は指しにくいです。
他の手だとすかさず▲9五歩とされて、美濃に囲うと玉は狭いですし作戦負けを防ごうとすれば、角交換型の穴熊に作戦を限定させられます。
これで△5五歩~△5六歩の筋は心配ありません。
以下、淡々と駒組みが続いて、ここがひとつの分岐点。
このまま飛車を5二の地点に置いたままでは、駒組みが進展しません。
後手は5筋を突いてもそれ以上押す手がないので、

飛車を2筋に転回

するケースが圧倒的に多いです。
また△8四歩と(半)銀冠に組んで△5一飛と引く中飛車らしい戦い方もあります。
5筋に飛車がいるからといって、中央から戦いを起こすというよりは地下鉄飛車にして
居飛車の攻めてくる筋か9筋に、飛車を回る狙いを持ちます。
ツノ銀で角を交換したときの戦い方に似た感じです。
どちらの手もありそうなのですが、プロの対局では8割方△2二飛です。

   【 丸山ワクチン基本図 】
丸山ワクチン基本図


基本図からの分岐と考え方


基本図はこの形にします。
既に中飛車ではないのですが、これも中飛車のバリエーションの1つと割り切ってください。
現代将棋のメインテーマの1つです。
△7二銀を後回しにして△4四銀を先に上がったり(逆棒銀の筋をなくす代わりに、穴熊の含み、相手の出方を見て駒組みを選択する高等戦術)または△6四歩と一手待ったり、先手のほうも▲4七銀を保留したりと基本図と微妙に異なる局面も少なからずありますが、結局は基本変化に合流することも多いです。
細かいことを言い出すと、ここはいろいろあるのですが、まずは
基本を押さえるところから始めましょう。

※△7二銀後回し・△4四銀型は逆棒銀の筋を消すことで▲5八金右型に誘導する狙いか。
ここで▲8六歩とした場合、後手は△7二銀を指していないので△8四歩とはしにくい。
先手が▲8五歩と玉頭の位を取ってくる展開は後手避けるのが難しい。
※後手が△5五歩を突いてこないのなら▲4七銀を上がる必要は必ずしもない。
(△5五角打ちは怖くない)
▲4七銀保留型は新たなワクチン基本図になりうる

ここでの指し手の選択肢は・・・

①・・・▲8八玉 
②・・・▲5六銀 
③・・・▲5八金右 
④・・・▲8六歩 
⑤・・・▲7七桂 

と手の広い局面です。

おおまかに先手の狙い筋は、玉頭の位を取るor銀冠or▲5六銀で盤中央の勢力争い。
対する後手の狙い筋は、△2四歩▲同歩△同銀の2筋逆襲または△4四銀~△3三桂~△2一飛~△4二金の形を目指して(オプションとして△2五桂単騎の飛び蹴り)、先手の動きにカウンターが入るように進めます。
律儀に解析すると・・・
(先手の出方5通り)×(後手の出方2通り)=10パターン
についてそれぞれ考えなければなりませんが合流する変化もあります。
この場でこれらのパターンすべてを追求するわけにもいきませんのでいくつか
典型的な例を抜粋します。


▲5八金右型対逆棒銀


▲5八金右は逆棒銀による2筋の逆襲があるので、△4四銀をみてから居飛車は右金を動かすと初期のころは言われていました。
こう指した以上は逆棒銀は覚悟の上▲7七角のラインがどれだけ、逆棒銀を食い止めることができるかにかかっています。
▲2七歩は耐えがたきを耐える手ですがここが収まれば、居飛車に楽しみの多い局面です。
△5五歩から銀ばさみを喰らいそうですが・・・
後手陣は5三の地点に駒の利きがないので、しのげています。
(将棋の日、次の一手名人戦▲羽生△森内)
余談ですが遠山流と言って7二金、6二銀の形だと5三の地点に駒が利いているので、展開はまったく異なります。
逆棒銀の筋は他の手でもつねにあるのですが狙いが単調なので、逆棒銀でひとつぶしというわけにはなかなかいきません。


▲5六銀型、△4四銀に▲4五銀ぶつけ


▲5六銀は盤中央を支配する手で、後手も△4四銀で対抗します。
▲6六歩から銀を玉側に寄せる展開は穏やかで、よくある展開ですが・・・
▲4五銀とぶつける妥協しない手もあります。
(67期順位戦C2▲佐藤天△戸辺)
2筋と4筋の歩が伸びて、居飛車が押し込んでいる印象を受けますが後手は当然反発します。
一例として△3五歩と飛車のコビン攻めを見せて、先手を動かします。
飛車をどかして、伸びすぎの歩に働きかけます。
以下は激戦になります。
▲4五銀とぶつけるのが、はたして必然かどうかは分かりませんがプロの間では
「よくある展開」のようです。
これまでは玉と反対側で戦いが起こる局面を見てきました。
しかし、プロの対局の大部分は、玉側での模様をよくすることに手を費やします。


互角な分かれ


普通に組み合うとこんな展開になります。
後手の銀冠ははじめは金銀2枚の囲いでしたが
局面が長引くと残りの金銀を玉側に少し寄せて
この囲いは意外に防御力があります
(47期王位戦▲森内△深浦)
無難に組み合っていると、形勢はともかくとしてお互い、とくに先手は
主張するところを失ってしまいます。(後手は千日手の主張がある)
後手が位を取らせてくれる展開であれば、先手も位を主張できますが
後手も妥協しないと、このような展開になります


後手からのカウンター(左銀のぶつけ、単騎△2五桂跳ね)


後手が局面の主導権を握るためには左銀を上手に使う必要があります。
歩がぶつからないので、先手の銀が中央に出てきた頃合を見計らって
カウンターが入るようにするのです。
局面を少し戻しまして、たとえばこの局面で後手は揺さぶりをかけます。
ガツンッ△5五銀・・・▲同銀△同歩に
次は△6九銀の割り打ちと、△5六歩~△3九角の狙いを見せて
局面の主導権を握ることができます。
先ほど無難に組み合った局面では先手に主張がないので、
後手が銀冠に移行する間に先手は7筋の位を取って銀立ち矢倉を目指します。
(25回朝日オープン戦▲阿久津△深浦)
次に▲7六銀引と引きつけられ▲8六歩~▲8五歩と伸ばされると後手作戦負けになります。
ここでも同様に銀ぶつけのカウンターです。
▲5四銀には△5一飛がピッタリ
銀交換はできないので先手は銀を引きますが後手は△5五銀と盤中央に圧力をかけます。
▲4七金にも後手は踏み込んで行きます。
後手は馬を作って、2筋を逆襲する楽しみがあります。
そして先手は3七の金が負担です。
後手は桂損ですが、これは後手に分のある局面です。

先ほどと似た局面ですが、次のような攻め筋もあります。
(48期王位戦第6局▲深浦△羽生)
△2五桂単騎の飛び蹴りです。
桂馬がタダだと飛びつくと2筋を逆襲され、これではいけません。
▲2五飛とこなければ、△2四歩とヒモをつけて1歩得に成功しました。
先手も1歩を手に入れて、次に桂馬を召し取りに行きます。
なので後手もじっとしてられません。
実戦は▲4七金と受けたのですが、ここで▲2六歩だとどうなるでしょう?
この桂成があるのが、先ほどの局面との違いです。
そしてじっと桂馬の進路を絶つ。
これで振り飛車ペースの戦いです。
実戦の▲4七金でも同様の攻め筋で、3七の金に働きかけて振り飛車ペースの戦いでした。


◎ ◎ まとめ ◎ ◎


話がこみ入ってきたのでまとめます。
後手は2筋に飛車を回って、2筋逆襲の筋を見せて先手をけん制しました。
しかし逆棒銀の筋は後手にとって
意外に実のない展開で、先手は堂々と駒組みを進めることができます。
なので後手も追随して先手と同じ銀冠にして、局面が煮詰まってくれば
先手の利のない局面に誘導します。
それではつまらないと、先手は位を取って右銀を引きつけ、不敗の態勢を築こうとするのですが後手もそうはさせじと左銀を中央でぶつけてカウンターを当てたり、
単騎の△2五桂跳ねで局面を揺さぶります。
先手も銀冠に組む時の手順を工夫して、7九玉のままで銀冠を急いで銀の割り打ちを消すようにしたり△2五桂を▲同飛で取れるような駒組みを模索します。
このあたりの指し手は直接駒がぶつかるという展開ではないので相手の手を見て自分の
フォーメーションを少し変えていく水面下のかけ引き が面白い中盤戦です。

以上、駆け足でワクチンの概要を見てきました。


ミニコラム・・・佐藤二冠の工夫


佐藤二冠は対ゴキゲンにも斬新な工夫をし、しかも他の棋士がマネをするような
アイデアを多数編み出しています。
ワクチンにおける角交換直後の▲9六歩はあまりにも有名ですが・・・
その後の基本図から玉頭志向の▲8六歩も佐藤二冠の発案です。
54期王座戦▲佐藤康△深浦戦では基本図から・・・

▲8六歩△8四歩▲5六銀△4四銀▲5八金右・・・

の手順で進みます。
後手は銀冠を作ろうと△8三銀と上がった瞬間に▲4五銀とぶつけます。
お互い8筋を突き合った形。先手玉は7九にいますが、後手玉は8二なのでアタリがキツい。
後手も△8三銀をとがめられるとは思ってもみなかったでしょう。
その後歩頭の▲4四銀という、佐藤二冠らしい ハードな攻め で勝ちました。




2008.07.04 Fri l 木曜・集中・中飛車学概論 l COM(0) TB(0) l top ▲

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